東日本大震災復興支援
門天プロジェクト

2012年8月15日水曜日

【もんてんエネルギーシリーズ Vol. 2】報告

もんてんエネルギーシリーズ Vol. 2
 「中川誼美さんとドキュメンタリー映画『パワー・オブ・コミュニティ』を観て
  エネルギーについて語りあう会~エネルギーを使わない豊かな暮らし~」報告

日時 2012年6月10日(日)15:00~18:00  
会場 門仲天井ホール
企画 YU-EN (斎藤弘美・高田ゆみ子・岡部幸江)
主催 門仲天井ホール
支援先 未来の福島こども基金(http://fukushimachildrensfund.org/)

「東日本大震災復興支援門天プロジェクト」の一環として開催された「もんてんエネルギーシリーズ」第2回は、キューバが石油危機を乗り越え、ピンチをチャンスに変えた経緯を追ったドキュメンタリー『パワー・オブ・コミュニティ』をゲストの中川誼美さんと観て、エネルギーについて語り合う会を開催しました。テーマは「エネルギーを使わない暮らし」。
原発事故以来、流行語のように口を突いて出てくる「節電」の2文字。311直後の計画停電の経験から、いままで如何に無意識に電気を、エネルギーを消費していたかを実感するようになりました。ちょっと暗くなった地下街や駅のホームにも慣れ、家の電気はこまめに消すようになり、ついでにアンペアダウンもしてみた…。そう、思い返してみればほんの少し前の日本では、今のように電気はたくさん使っていなかったのです。「家電製品の三種の神器」といわれた冷蔵庫、洗濯機、テレビが登場したのが1950年代後半。続いてカラーテレビ、クーラー、自家用車の3Cが1960年代半ばから「新・三種の神器」として家庭に入り込み、エネルギー消費はそれまでとは比較にならないほど膨大になりました。そして1980年、私たちはオイルショックを経験。エネルギー消費を見直すきっかけになったはずでしたが、日本が選んだのは原子力発電所の増設でした。
そんな日本とは対照的に、今回の映画の舞台キューバでは、石油の輸入が半減してしまったソ連崩壊後の1990年以降、食料の輸入8割減という事態に直面。大規模な近代化農業から、都市を含めて農地化できるところでは至る所で有機農業を展開し、ピンチをチャンスに変えていったのです(※1)。キューバのこうした挑戦は、原子力から自然エネルギーへの転換を迫られている私たちに勇気と希望を与えてくれるのでは…ということで、その経緯を記録した映画「パワー・オブ・コミュニティ~石油から自然エネルギーへ/キューバに学ぶ思いやりと分かち合いの新世界~」を上映しました。
一方、会場でこの映画を一緒にご覧になったゲストの中川誼美さんは、自然と共にあった「少し前の日本の暮らし」を思い出して!と呼びかけ(※2)、ご自身も実践していらっしゃる旅館「吉水」(※3 )の女将。中川さんの宿には、テレビも電話も冷蔵庫もクーラーもありません。竈でご飯を炊き、化学調味料を一切使わない、「いのちがよろこぶ」調理法で食事を作っています。中川さんがそのような生活になったのは、結婚を機に移り住んだウッドストックでの経験からだったそうです。この日は参加者のために、わざわざご自宅から、蓬・朴葉・スギナを干して作った自家製のお茶と、3分搗きの玄米に刻んだカブの葉を混ぜ込んだおにぎり、それに味付けをしていないのに塩味がほんのり感じられる大豆の煮物を作ってきて、ご馳走してくださいました。素材本来の味を活かした調理法に舌鼓を打った参加者たち。納豆をカップのまま食べる人が多いけれど…、といった身近な例を挙げて「食べる」ということをもっと大切に、という中川さんのことばに頷いていました。お話しは食生活だけでなく、かつての日本にあった家族の団らんについても。中川さんは家族が家に揃うことが少なくなるにつれて、日本の家にはモノがあふれるようになったといいます。まるで心の穴をモノで埋めているよう、という中川さん。311の東日本大震災と原発事故のあと、「銀座吉水」廃業してしまいましたが、現在も京都府の2つの「吉水」を経営するほか、2010年からは築地本願寺をはじめ、各地で朝市を開催するなど、日本中を飛び回って「ちょっと前の日本の暮らしを大切に」と呼びかけていらっしゃいます。
キューバが実践した農業改革と中川さんが実践している「ちょっと前の日本の暮らし」。これこそ私たちが今、ピンチをチャンスに変えるポイント、といえそうです。
なお、この日の参加費・寄付金あわせて25.000円は未来の福島子ども基金に寄付いたしました。

(※1)「パワー・オブ・コミュニティ
~石油から自然エネルギーへ/キューバに学ぶ思いやりと分かち合いの新世界」
原題:The Power of Community: How Cuba Survived Peak Oil 
制作:Arther Morgan Institute of Community Solutions 
日本語字幕版制作:日本有機農業研究会科学部
(※2)『ちょっと前の日本の暮らし』(中公新書ラクレ 2010.11)
『本当に大切にしたい日本の暮らし』(WAVE出版 2011.7)
(※3)京都吉水・あやべ吉水 http://www.yoshimizu.com/
                               (文責 斎藤弘美)



0 件のコメント:

コメントを投稿